【blog小説】星の流れに エピソード 8

八章 着

1.

四越デパートは広島にもある、半信半疑で香川は電話を入れてみた。

「初めまして私、段原にある西島食品、営業の香川と申します。

この度、弊社が新開発した、商品につきましてクラウドファンディングを募りました。

ありがたいことに、四越伊勢丹ホールディングスさんより、100口もの募金を頂きまして、お礼の電話をさせて頂きました」

「段原の西島食品様ですね、有難うございます。 弊社の部署 及び、担当者名を御願い致します」

香川は、ゆうこから聞いた藤木という名前を伝えた。

「失礼ですが藤木は、部署名を申し上げなかったでしょうか?」

部署とか詳しいことは聞いていない、

「申し訳ありません。 ネットでコメントを頂いただけで詳しいことは分かりません」

「確認してみます。 私、オペレーターの川上(かわかみ)と申します。 少々お待ちください」

保留になった電話から繰り返し、カノンのメロディーが流れてくる、やはり難しそうである。

5分ほど待っただろうか……

「長い間、お待ちさせ申し訳ありませんでした。

藤木は東京本社MD戦略統括部に所属しておりまして、現在ヨーロッパ出張となっています。

帰国次第、西島食品の香川様に連絡するよう担当の者に伝えておきます。 お電話番号は、この番号でよろしいでしょうか?」

「ハイ! この番号で御願い致します」

すごく丁寧な対応だった。

「帰られ至大、連絡いただければと思います!」

いままで外回りで、さんざん痛めつけられた香川は、こんな些細な対応にも感動した。

「ヨーロッパに出張?」

香川にとって別次元の話だった。

切れた受話器を戻すことなく、呆然と握り締め、上がっている警告音に気づき、香川は慌てて受話器を戻した。

藤木から電話があったのは、5日後のことであった。

「香川部長、四越伊勢丹ホールディングスさんの、藤木さんという人から、電話が入っています」

入社して25年以上たつ、総務部のお局様保見(ほみ)Lが電話を回してきた。

「お世話様になっております。 西島食品の、香川です!」

少し緊張し香川が電話をとった。

「初めまして、私、四越伊勢丹ホールディングMD戦略統括部の、藤木茂之(ふじきしげゆき)と申します。

実は御社が開発された、肉じゃがオムレツに興味を持ち、失礼ですが弊社と取引のある、東条フーズさんの商品と、比較させて頂きました」

藤木は評価の概略について話した。

「グルタミン酸、アスパラギン酸、イノシン酸、グアニル酸、コハク酸、数値的にこれらの旨味成分において、全て東条食品さんの方が勝っていました。 弊社の場合試食させていただき、最終的に人の味覚にて最終評価します。

『これは誰が作ったんだ!』と、弊社の取締役がいわれ、

御社の名前を出してしまいました……」

藤木は続けて陳謝した。

「急な話で申し訳ありません、来週金曜日、取締役に同行し広島四越に伺うことになっています。 こちらの都合で大変申し訳ございませんが、15:00、伺いたく存じます」

同じ段原にあるメックスとは大違いだ、

「矢崎のザコが!」『実るほど頭を垂れる稲穂かな』メックスの矢崎に聞かせてやりたかった。

「それと……」藤木が遠慮がちにいった。

「何でしょうか? 藤木さん、遠慮なくおっしゃって下さい」

香川がそういうと藤木が話しだした。

「誠に一方的なお願いなのですが、

本当に申し訳ありません……

実は取締役が、是非、西島忠則会長に、お会いしたいと申しています。

ご都合の方は如何でしょうか?」

「かしこまりました。 スケジュールを確認し明日までに返答させて頂きます」

受話器を握ったまま、香川は頭を下げた。

加奈子さん、会長、社長、来週の3月28日、15:00~の予約確保お願いします!」

香川は確認するのではなく、支持するようにいい、四越伊勢丹ホールディング、MD戦略統括部の藤木に、予約が確定した旨の連絡を入れた。

2.

3月28日、14:45、西島食品玄関に待機していた香川の前に、黒塗りのセンチュリーが現れた。

助手席のドアーが開き藤木が降車した。

脂がのった40代で聡明そうな人だった。藤木は香川に対し深く御辞儀をした。

「この度は、無理なお願いをし申し訳ありませんでした。

御社製品の試食をした、取締役の近藤が、どうしても話がしたいと申しまして、同行させていただきました」

藤木は、更に深く頭を下げた。

「誠に申し訳ありません! 実は御社の西島忠則会長の名前を、取締役のお父様であらされる名誉顧問がお知りになりまして、勝手ですが同行させていただきました」

取締役と名誉顧問と聞いた香川は、ガチガチに緊張している。

メックスの矢崎なんか話にならない、

その違いは大きい月と鼈である。

藤木は、センチュリーのリアドアーを開けた。 杖を片手に辺りを見回し、名誉顧問がいわれた。

「戦時中、私は呉に4年ほど住んでいました。広島は見事に復興しましたね!」

香川の予想は外れ二人とも、実に腰の低いのには驚いた。

「こちらにどうぞ! 社長と会長がお待ちしています」

そういうと香川は、3人を3階の社長室に案内した。

社長室には、忠則、徹、香川、藤木、取締役、名誉顧問、6人が応接セットに腰かけている。 コーヒーのいい香りがした。

加奈子が6人分のコーヒーを出した。

名刺交換に移ったとき、名誉顧問が忠則にいった。

「元気そうでなによりじゃ! 西島!

台湾で分かれ67年経つか……

西島上等主計兵曹! ワシを忘れたか?

近藤じゃよ!」

ハッと気づいた忠則は、直立不動で最敬礼をした。

「近藤主計中尉であらされますか!」

1947年7月、中華民国に賠償艦として雪風を引き渡し、分かれて以来の再開だった。

「よこにいるのが息子の吉行です。

私が25歳のときこいつが生まれました」

61歳になる近藤取締役の事だった。

「こいつが商品試食のとき、雪風の肉じゃがの味だったと、私に食べさせてくれたのが、

西島食品さんの、肉じゃがオムレツでした。人間何歳になっても味の記憶は忘れません。

確かに雪風の肉じゃがの味でした。

西島上等主計兵曹、これは息子さんの西島社長が開発されたのですか?」

「近藤主計中尉、こいつとは血はつながっていません。

原爆で肉親全てを亡くした戦災孤児です。養子として育てました!」

「知らぬ事とは存ぜず、無礼な事をいってしまいました。

西島社長も御苦労されたのですね……」

社長室が静まり返った。 タダ爺が、場の空気を換えるように発言した。

「主計中尉! 呉で作られていた、広甘藍を憶えておられますか?」

広甘藍の事は近藤も鮮明に覚えていた。

今ではほとんど流通されていない。

「瑞々しくて、甘味が強いキャベツ広甘藍、東京では見かける事はないなぁー」

近藤が、懐かしむようにいった。

「その広甘藍を使って、焼くお好み焼きが、同じ町内に存在します。

歳は、若干32歳の男ですが腕は確かです。

そいつに鴇田烹炊長から教わった、雪風の肉じゃがの作り方を、教え込みました」

突然、徹が提案した。

「みなさん! 広島のお好み焼き、めしあがったことございますか?  その男が広甘藍を使って焼くお好み焼き、今から出前してもらおうと思いますが、食していただけますでしょうか?」

「それは楽しみです!」

藤木が真っ先に即答した。 ハッと気づいた藤木は我に返った。

「すいません! 名誉顧問・取締役を差し置きまして、ついつい返答してしまいました」

藤木が深く頭を下げた。

実は、週1回行列に並んでまで、広島焼の店に通うつうであった。

近藤取締役がすかさずフォローした。

「藤木君、僕も凄く楽しみですよ、ねぇ父上」

「広甘藍、もう70年近く食べてないですなぁ…… 西島上等主計兵曹、食べさせてもらえますか?」

名誉顧問が笑顔でいった。 それを聞き徹がすかさず動いた。

「そういうことなので香川部長、加奈子さんにいって速攻でふみちゃんのお好み焼き、

輝明君に届けてもらうよう、段取りお願いします!」

香川は、席を外し加奈子がいる社長秘書室に向かった。

15:00過ぎ、いつものように、この時間帯は店にお客もなく、輝明は新聞のテレビ欄を見ていた。

「ハイ! 輝明です。

加奈子さん、こんな時間にどうしました?」

「急にすいません! 一生のお願い、無理を聞いてください! 四越伊勢丹の名誉顧問、取締役ふくめ、3名来客されていて、広甘藍を使ったふみちゃんのお好み焼きを食べてもらいたく、超速攻で肉玉そば6枚焼いて、社長室まで届けてもらいたいんだけど……」

「それは超困ったなぁー と、いうのは嘘で全然大丈夫ですよ! 焼き上がるのに14分、

赤兎馬をぶっ飛ばして3分、余裕を見て25分あれば届けられるかなぁ……」

その話を聞いて加奈子はホッとした。

「輝明君、話をして邪魔にならないかなぁ?」

「大丈夫ですよ! ハンズフリーモードにしてますから!」

加奈子は経緯を話し出した。

「実はね、香川部長、四越さんとね、新開発した肉じゃがオムレツの、商談しようとしてるの、四越さん社内コンペをして、仕入れ先として、どうもうちが選ばれたみたいなの?

詳しく話したら、長くなるので簡単にいうね、

四越の名誉顧問、近藤さんというんだけど、どうも、海軍時代タダ爺の元上官らしいの?

広甘藍の話題になって、是非とも食べたいとおっしゃって、輝明君にお願いしたわけ、

長くなるので切るね!」

そういって加奈子は一方的に電話を切った。香川は耳をすませ、加奈子のやり取りを聞いている……

「香川部長、25分後に持ってきてくれるそうです! それまで何とか、取り繕っておいて下さい」

「分かりました! 恩に着ます!」

そういい残し、香川は社長室に向かった。

心配する事は無かった。 近藤名誉顧問と、タダ爺は昔話に花が咲き、25分は、あっという間に過ぎた。

赤兎馬に乗った、輝明が玄関前に止めようとしていた。 すっかり打ち解けた藤木が音に気づき下を覗いた。

藤木が目を輝かせていった。

「あれ…… KAWASAKAの、ZZR1100Dじゃないですか!

今となっては古いバイクですが、僕はあれに乗るのが夢なんですよ!」

横で聞いていた香川には、全く異次元の話で、何をいっているのか理解不能だった。

「そうですか?」と、愛想笑いをするしかなかった。

社長室の扉をノックする音がした。

加奈子だった。 革ジャンにジーンズ姿で、レジ袋を下げた輝明が控えていた。

室内では近藤名誉顧問とタダ爺、近藤取締役と徹が超盛り上がっていた。

「お待たせしました!」

輝明が遮るように、大きな声でいった。

みんなの視線が、レジ袋を下げた輝明に集まった。 「出前御苦労!」タダ爺だった。

「近藤主計中尉! こいつが雪風の肉じゃがの味を受け継いだ、32歳、五百旗頭輝明であります!」

二人ともすっかり、67年前にタイムスリップしていた。

「好青年じゃありませんか! 32歳とは、お若い! 我が雪風の肉じゃがを、継承して下さりありがとう!」

取締役が堰(せき)を切ったように話し始めた。

「私は父が作る肉じゃがを食べて育ちました。肉じゃがオムレツコンペ試食会で、口にし、衝撃を受けました。

ずっと食べ続けた肉じゃがの味だったからです。 全てのうま味数値において、比較した企業の方が勝っていました。

しかし評価は数値だけではありません。

良い素材を使えば美味いのは同然です。

コストパフォーマンスを考慮すれば、御社の方が遥に上です!」

そういうと近藤取締役が、そつと胸に手を当てた。

「最高の旨味成分は、心、愛情です!

それは食品に関わる事だけではありません、

まだまだですが、弊社もそのことを軸に、企業活動するよう、いつも従業員に教育しております。

開発するのに苦労されたのですね?

藤木から、御社がクラウドファンディングされていることを聞きました。

横でかしこまって聞いていた、藤木が話をつないだ、

「御社が作成されたファンディングのページを見させてもらい、感銘を受けました。

その若さで保護司、五百旗頭さん、

素晴らしいです!

英文のページも併記されていましたが、

翻訳も見事です!

お恥ずかしながら弊社には、ここまで純粋に英訳できる、スキルを持ち合わせた者はいません、恐らく御社には表現の構想 及び、英語に関し、優れた人材がいらっしゃるのでは? と、推測しております」

「その通りです!」

徹は、渾身の力を込めていった。

「私は、優秀な従業員に恵まれ助けられました、感謝の気持ちでいっぱいです。

こうして、四越さんとお話ができたのも、奇跡だと思っております」

徹の純粋な気持ちだった。 商談の話を切り出したのは、近藤取締役の方からだった。

「そこでですが西島社長、様子見ということで毎月、肉じゃがオムレツを納入して、いただけませんでしょうか?」

徹は、正直に現状を伝えた。

「加工設備は整っているのですが、お恥ずかしながら、まだ本格稼働させたことがありません」

自信なさそうに、香川もつけくわえた。

「近藤取締役、とりあえず様子見ということでよろしいのですよね……?」

近藤取締役は香川に向かって、指を一本たてた。

「えぇっと…… 100食の12か月で1200もですか?」

まだ5食しか売れていない、香川にとって1200は、とてつもなく大きな数字だった。

これには、近藤が困った顔をしていった。

「香川部長、100食じゃなく、

1000食/月でと思っていますが如何でしょうか?」

「1000X12

もしかして1万2千食もですか!!」

これまでの事を思うと、香川にとって信じがたい数字だった。

「まずは、様子見ということで、1000、2000、4000と、ケースバイケースで

増やさせて頂ければと考えていますが、問題ないでしょうか?」

開いた口がふさがらないとは、真にこの事だ、香川は「全力で努力します!」と、いうのがやっとだった。

それを聞き、藤木が具体的に商談を始めた。

「西島社長失礼ですが、御社の取引先銀行は、どこでございますでしょうか?」

企業どうし取引するためには、銀行口座が必須だ、キャッシュ(運転資金)があるとはいえ、西島食品は広和信用金庫の口座をしめ、取引銀行はない……

徹が正直に答えた。

「取引先銀行はございましたが、融資の問題等、色々ありまして閉じました……」

これにはすぐさま、藤木が質問した。

「材料の仕入れとか、どうされています? もしかして、口座がないという事は、

現金取引ですか?」

「お恥ずかしながらおっしゃる通りで、全て現金で購入しています」徹が元気なく答えた。

ビックリし、藤木が質問した。

「失礼ですが、キャッシュで企業活動されている? 運転資金はあるのですよね?

弊社のメインバンクは、四井住友銀行になります。 これは一方的なご提案なのですが、メインバンクを四井住友銀行とし、口座開設されたら如何でしょうか?」

日本では、ミズポ銀行、四菱UFJ銀行、四井住友銀行が、3大メガバンクと呼ばれる。

メガバンクとは、総資産がおよそ1兆ドル以上の巨大な銀行グループを指す言葉で、企業にとって法人口座開設するには、ハードルが高く、口座開設するということは、

『その企業を銀行が面倒を見る』ということを意味している。

一般的に取引しようとすると、銀行の口座がない場合、そこの口座を持っている商社等を間にかまし、口座使用料が必要となる。

「西島社長、口座開設には審査など数週間かかります。 四井住友銀行でよろしければ、私が間に入ります!」

「藤木! 西島社長にもお考えがあるんだ! 少し出しゃばりすぎだぞ!」

「四井住友銀行の、手先のようになってしまい申し訳ございません……」

近藤の言葉を聞き藤木は、即座に陳謝した。

「藤木さん、弊社の為に申し訳ありません。

こちらとしては願ったり、かなったりですよ!

ねぇ、香川部長!」

「しかし、四井住友銀行のようなメガバンクが、田舎の中小企業西島食品なんか、相手にしてくれますかね?」

「香川部長、その事でしたら、悪いようにはしませんので、私にまかせていただけませんか? 実は大学時代の親友が、四井住友銀行の広島支店長なんです!」

冗談ではなさそうだ……

もしかしたら中小企業西島食品でも、四井住友銀行に口座を持つことができるかも知れない…… そう甘い夢を描いていた徹が急に思い出した。

「あっ! いけない!

話に夢中になってしまいました。

お好み焼き職人が、焼き上げた肉玉そば、すっかり冷めてしまいましたね! すぐ温めますので、少しお待ちください!」

温め直した肉玉そばをワゴンに乗せ、

加奈子が運んできた。

社長室が、オタフクソースのいい香りに、つつまれた。

「西島上等主計兵曹、遠慮なく頂くよ!」

「おっ!!」

一口食べ名誉顧問の表情が変わった。

「真に広甘藍の味! 70年前と全く変わっていない!」

「これが広甘藍ですか! 誰が食べても違いが分かりますね!」と、取締役、

「僕は毎週のように広島焼を食べに行っていますが、初めて食べる味です! キャベツの甘さ瑞々しく絶妙な蒸しかげん、

これは芸術品です!」

輝明が焼いたお好み焼きは、藤木にそこまでいわせた。

「今日は西島さんにお会でき、充実した一日でした。

同じものを、みんなで分かち合い食べる。

これが愛なのですね!

今後ともよろしくお願いいたします」

近藤取締役と徹は、固い握手を交わした。

3.

「社長、四井住友銀行、広島支店の青木さんという方から電話が入っています。

お繋ぎして宜しいでしょうか?」

秘書の加奈子からだった。

「御願いします!」徹は即答した。

「初めまして、この度は弊行へ口座開設申請して頂きまして、大変有り難うございます。

わたくし、四井住友銀行広島支店の青木と申します。 四越の藤木から開設処理に必要な、書類一式受け取り審査させていただきました。 滞りなく審査が通りました。

つきましては、御社の口座開設手続きを行

いたいと思うのですが、担当者さんと、社長本人様、来行いただけないでしょうか?」

徹は予定表を確認した。

これは1日も早い方が良い、明日行われる懇親会の出席をキャンセルすることにした。

「お待たせいたしました。 それでは明日の午後2時ということで宜しいでしょうか?」

「明日の午後2時ですね、それではお待ちしております。 何卒宜しくお願い致します」

広和の玉井とは雲泥の差だった。

徹はすぐに経理の畑山に電話をいれた。

「急な話ですが、新たに銀行口座開設することになりました。 畑山部長社長室まで来てください」

目の色を変え飛んできた畑山が、息を切らしながらいった。

「社長、口座開設するのは、どこの銀行でしょうか?」

それもそうである、半年以上、回る銀行で叩かれ続けたからだ、

「畑山部長、落ち着いて下さい」

そういって徹は、畑山を応接セットに座らせた。 徹がもったいぶっていった。

「うちが新たに口座開設するのは、

四井住友銀行です!」

「四井住友!!」

畑山は耳を疑った。 それもそうである、日本3大メガバンクに法人口座を持つ小企業の名前など、聞いた事もなかったからである。

畑山は、まるで地球が消滅したかのように驚いている……

「夢に間違いない!」畑山はそう思った。

「畑山部長、だいじょうぶですか?」

徹が覗き込むようにいった。

「その四井住友銀行広島支店の、青木さんという方から電話をもらいまして、明日午後2時、口座開設の手続きに伺うことになりました。

同行よろしくお願いします」

畑山は、なんだか上の空で聞いているようであったが、青木という言葉に脊髄(せきずい)反応をした。

「社長、四井住友銀行広島支店の青木さんといわれましたよね?

その方、支店長です……」

朝方降っていた小雨も、すっかり上がり、雲の切れ目からは太陽がのぞいている。

徹も畑山も、四井住友銀行の店内に入るのは初めてだった。

四井住友銀行は、徹が知っている広和信用金庫とは全く違い、上品に静かで漂う空気が全く違っていた。

畑山が徹に耳打ちをした。

「青木支店長、まだ若く東京大学経済学部の卒業です!」

「えぇ! 確か藤木さん、四井住友銀行広島支店長と大学時代の親友だといっていましたよね?

それじゃぁ、藤木さん東京大学卒だということですか!」

徹はそのことに驚いた、藤木は東京大学卒だという素振りが微塵もなかったからである。

「社長、藤木さんって誰ですか?」

「まだ確定した話ではないので公表はしていませんが、新開発した肉じゃがオムレツの、

商談が進んでいるのですよ!

藤木さんって、相手側の担当者さんです」

部屋をノックする音がした。 書類の入ったクリアファイルを右手に持ち、銀縁眼鏡をかけ、やせ形で、頭の切れそうな男性が入ってきた。

「お忙しいところ、およびだて致しまして、恐縮です。 わたくし四井住友銀行広島支店の青木と申します」

徹と畑山は立ち上がり、名刺交換を行った。名刺には、四井住友銀行広島支店 支店長

青木博之(あおきひろゆき)と書いてあった。

「どうぞおかけ下さい。

これから御社、西島食品様とお付き合いさせて頂くことになりました。

早速ですが、口座開設の手続きに入らせて頂こうと思います」

そういうと青木は、真新しい通帳とキャッシュカードを徹に渡した。

通帳には、西島食品代表取締役 西島徹とかかれ透明なテープで保護された。

西島食品の社印がまぶしかった。

「畑山さん、少しの金額でよろしいのですが、口座振り込み御願い致します」

青木は、一通りの説明を終え徹に話した。

「この度は何かのご縁があり、藤木から御社のこと聞きました。 夢のある会社ですね!

ぜひ、この広島の地から大きく成長してください。 期待しています!

弊行が力になれる事があれば、どんな些細な事でもかまいません、気軽にお申しつけください。

西島社長、末永くお付き合いのほど、

よろしくお願いいたします!」

その言葉に徹はジーンときた。

「こちらこそ、よろしくお願いします!」

徹と青木は、ガッチリ固い握手を交わした。その様子を隣にいる畑山は、今にも泣きだしそうな顔をして見ていた。

4.

「加奈子さんあてに、レターパックが届いています」営業課の三上(みかみ)Lが持ってきてくれた。

中には、村品が構想したCMの絵コンテが入っていた。

制作費がかけられないという事で、輝明と、ゆうこをタレントとし起用する案だった。

『輝明と、ゆうこの肉じゃがオムレツ!』

『がんばろう東北! いまこそ日本が一つになるとき! 西島食品は、いつもあなたを応援しています!』

「これは、絶対にいける!」

書かれていたキャッチコピーを見て加奈子は、ホッコリした気分になった。

加奈子がふみちゃんにメンバーを招集した。

輝明が浮かない顔をしていった。

「ゆうこ絵コンテ見たか?『輝明と ゆうこの肉じゃがオムレツ』参ったよな……」

「有名タレント起用する制作費なんか、ないんだから、仕方ないジャン!」と、ゆうこ、

「そうだけど、このCM全国に流れるんだぞ、 ゆうこ分かっているのか? お前は恐怖のB型だよ!」

ゆうこが目を三角にして怒っている。

「男のくせに、半煮えのように、ぐじゅぐじゅぐじゅぐじゅ…… なにが恐怖のB型よ!

やるのならヤル!

やらないのなら、やらない!

ハッキリしてもらわないと困るんだけど!」こんな、ゆうこは見たことがない、

輝明は大人しく「ハイ……」というしかなかった。

5.

「畑山経理部長キャッシュ1億残し、後の5億、四井住友銀行の口座に、入金しておいて下さい」

「5億入金! かしこまりました!」

畑山が力強く復唱した。

徹は今までの経緯を公表し、新たなお願いをするため緊急部長会を開いた。

「今日は皆さんへの新たなお願いと報告があり、集まってもらいました」

徹は立ち上がり深く頭を下げた。

「みなさん、これまで心配をかけ、大変申し訳ありませんでした。

西島食品は動き始めます!

まず、報告することが2つあります。

一つ目は、新たに銀行と口座開設することになりました。 二つ目は、肉じゃがオムレツの大口受注です!」

徹は力強くいった。

「新たな口座開設先ですが、四井住友銀行が我社のメインバンクとなります。

又、肉じゃがオムレツの大口受注先ですが、四越さんと取引を開始する事になりました」

「えっ!! 四井住友銀行? 四越?」

これまでの経緯を知っている、香川と畑山以外、ざわめいた。

製造部長の加藤が思わずいった。

「徹社長、四越さんへの納入数はいくらですか!」

徹に変わり、営業の香川が口を開いた。

「注文量は、1000箱/月です。

フル生産になるよう営業活動頑張ります! よろしくお願いします!」

香川は加藤に目線を送り、こぶしを強く握り締めた。

「広和信用金庫との口座を閉めたことで、

従業員への給料現金渡し、経理部の皆さんには、ご苦労かけてしまいました。

そこで御願いですが、全従業員、四井住友銀行口座開設お願いします。 住宅ローン等、広和信用金庫に比べ四井住友銀行の方が金利も安くなります」

これまでは、金利が高くても地方銀行か、信用金庫しか相手にしてもらえなかった。

従業員みんな、広和信用金庫のローンを、一括返済し、四井住友銀行に借り換えを行なった。

7.

畑山の作戦は、効果てきめんだった。

腰巾着の松井が血相を変え、支店長室に飛び込んできた。

「玉井支店長、大変です! 西島食品の全従業員、ローンを一括返済しました!」

「なんだと!!」

玉井は大きく開き読んでいた、新聞を急いで閉じた。

慌てふためき、玉井が腰巾着の松井を連れ西島食品にやってきたのは、ちょうど徹と経理の畑山、営業の香川が、今後の作戦について話していたときだった。

「西島社長、広和信用金庫玉井支店長が、お越しになられました」

営業課受付の三上Lからの内線電話だった。

「三上L、お通しして!」

受話器を押さえ、徹が小声で畑山にいった。

「効果てきめん! 速かったですねぇ……

広和信用金庫玉井支店長と融資課長の松井さん、読み通り来社されましたよ!」

「徹社長、御願いがあります! 私から奴らに引導を、わたさせて頂けないでしょうか!」

鋭い眼光をし、畑山が懇願した。

ドアーがノックされた。

営業課の三上Lだった。

「西島社長、広和信用金庫の玉井支店長と、松井課長が、おいでになられました」

お山の大将のような態度で玉井が、腰巾着の松井を引き連れ現れた。

「これはこれは西島社長! 御社の従業員さん弊行のローン、一括返済されたと松井から聞きました。

どこか別の銀行さんに、借り換えされたのですかね?」

凛々しい目をして徹がいった。

「玉井支店長、貴行には、まったく関係ない話ですよね?」

「そういわれましても、事前に話もなく急に一括返済とは…… 困るんですよ?」

「困る? って、貴行と口座取引がある分けではなし、西島食品としては、全く関係ないことですよね!?」

畑山がそういうと、腰巾着の松井がいいはなった。

「失礼ですが安芸銀行さんにも、安芸総合銀行さんにも問い合わせてみました。

御社従業員さんのローンなど引き受けたことはないと……」

徹は紳士的にいった。

「失敬ですね! 人の財布を覗くようなことはやめて頂きたい! なんども申しましたが、貴行にはまったく関係ない話です」

「地方銀行さんでも引き受けて、いないとなれば中小企業の従業員さんのローン、肩代わりなどしてくれるところなどないでしょう?」

松井が余裕綽々で言い放った。 高飛車な態度には、あきれてものがいえない、

「玉井支店長、松井課長の態度なにか勘違いされていませんか?

貴行に報告する義務はありませんが、

弊社も新たに法人口座開設しました。

貴行より安い金利のローンに切り替えた、単純にそれだけですよ!」

腰巾着の松井が、煽(あお)るようにいった。

「へぇー 御社のような、倒産しそうな中小企業と口座開設する、律儀な銀行あるのですかね?」

隣で聞いている畑山は、顔を真っ赤に硬直させ、今にも爆発しそうだ……

徹が確認するように聞いた。

「それで貴行は、なにをしに来られたのですか? もしかとは思いますが、ローン先を、自分のところへ変えろとでも?

それなら、お引き取り下さい!」

虎の威を借る狐(きつね )とは、腰巾着松井の為にある言葉だ、

「親切心からですよ! 我々のような信用金庫じゃないと難しいのではと思っただけです。

倒産しそうな中小企業へ、律儀に救済する銀行があれば教えてほしいものだ!」

松井が毒づいた瞬間、畑山が爆発した!

「大人しく聞いていれば、信用金庫の分際で偉そうに……

冥途の土産に教えてやる!

新しい口座開設先は、四井住友銀行だ!!

トットト消え失せろ!!」

「え!!!!? 四井住友!!!!!! ピューーーーー」

野球の応援で使うジェット風船のように、一気に空気が抜けた玉井と松井は飛び去った。

8.

全国に肉じゃがオムレツのCMが流された。村品の作戦は見事に的中し関東で火が付き、

関西では瞬く間に燃え広がった。

『輝明と ゆうこの肉じゃがオムレツ!』は、

その年の流行語大賞にノミネートされるまでメジャーになった。 輝明とゆうこは、もはやスターといっても過言ではない、

それに合わせるように、四越から肉じゃがオムレツの発注量は、1000、2000、3000と、鰻上りで増えて行った……

全く売れない過去のことを思えば、嬉しい悲鳴であるが生産能力上限の9130/月を、むかえようとしていた。

「西島社長、昼夜総出でフル稼働していますが、生産効率を高めたとしても10000が限界です!」

製造部の加藤だった。

この調子だと近々に、10000を超える事は間違いない、名川敏一(ながわとしかず)から、西島食品に電話が入ったのは、そんなときであった。

「私、東条フーズの名川と申します。

実は、四越伊勢丹ホールディングスさんの、MD戦略統括部、藤木さんから『御社の肉じゃがオムレツを応援生産できないか?』と、

相談を受け電話させていただきました」

徹は以前、藤木から東条フーズにも似たような商品があり、コンペをおこなったという話を思い出した。

「これは藤木さんに提案され、わたし独自の判断なのですが……

出来れば御社の肉じゃがオムレツをライセンス生産し、納入させて頂けないか? と、ご提案の電話を入れさせていただきました」

徹は納品対策に関し、藤木に相談をしていた経緯があった。

藤木には、『10000/月 対応の必要性が、急務である』と、いわれていた。

徹は名川に対し前向きな返答を返した。

「名川工場長、わざわざ、お電話ありがとうございます。

どうでしょう? 生産のキー部分は、お見せすることは出来ませんが、一度弊社の生産現場を見ませんか?」

「お伺いします!」名川は即答した。

それもそうである、新設した東条フーズの肉じゃがオムレツ生産ラインの稼働率は、

20%を切っていたからである。

週末に名川は来社した。 名川は徹が予想していたよりも若く58歳、小柄で人のよさそうな印象だった。

生産現場は、営業の香川と製造部の加藤が案内をした。 短期間に増産対策をどうするか? が、最大の問題となり困惑した。

緊急対策会議を開いても解決策が全く見いだせない……

開発部の竈門がポツリといった。

「新たに機械を導入したとして、スーパーマンのように、肉じゃがオムレツを作る伎を、

機械に教え込むことができる、社員がいたらなぁ……」

「そうだ!!」その言葉に、ゆうこがハッと閃いた。 気がついたら社長室に走っていた。

思いの丈、すべてを無我夢中に話している、自分がいた。

唐突であったが、熱くゆうこが語る内容に共感した徹は、決断したように受話器を握った。

「加奈子さん! 急で申し訳ありません、今すぐふみちゃんに連れて行ってください!」

15:00過ぎ、ふみちゃんはいつものように、お客さんはいなく閑散状態だった。

テーブルに腰かけ、エプロンを外し輝明は、スマホを触っていた。

「どうされました、徹社長突然に?」

「輝明君! 御願いがあります! ふみちゃんを、西島食品のアンテナショップとして、

買い取らせてもらえませんでしょうか?

この通りです!」

徹は二つ折りに、深く頭を下げた。

目をパチクリさせ輝明がいった。

「ちょっと待って下さい!

全く意味が分かりません?」

「輝明君、率直にいいます!

我が西島食品に、入社してもらえないでしょうか!?」

徹の思いがけない言葉に、輝明は、完全に困惑している。

全く状況が、呑み込めないからである。

徹が畳み掛けるように続けた……

「週5日は、西島食品のアンテナショップとしてふみちゃんの店長、週1日、西島食品への勤務!  如何でしょうか?」

あまりにも突然な話に、輝明は答える事ができない、そんな輝明にN1008が爆発的に売れ、対処する方法が見つからず、ゆうこの提案に飛んできたことを、輝明に説明した。

話を聞き、状況は分かったが、

「少し考えさせてください……」と、いうのがやっとだった。

9.

部長以上全員が、会議室に集められ、徹が堰(せき)を切った。

「増産対策とし高圧蒸気滅菌器5台と、加工ラインを増設します!」

開発部長の竈門が、すぐに口を開いた。

「社長、増設と簡単にいわれますが、短期間に立ち上げるには、熟練したノウハウを機械に教え込む必要があります。

お言葉ですが、西島食品には、仕事に余裕のある社員など、一人たりといません!

この短期間ではムリです!」

徹は自信満々の表情でいった。

「竈門部長のいう通りです!

灯台下暗し、もしその技を持った人が、

入社してきたらどうしますか?」

「灯台下暗し? そうか!」

竈門が何かに気づいたように立ち上がった。

バイクを玄関前に止め、脱いだヘルメットを片手に持ち、2階の会議室に向かう影があった。

会議室のドアーがノックされ開いた。

『海援隊の旗印の中心に、丸に西!』

真新しい西島食品のユニホームを身につけた輝明が現れた。

「ようこそ! わが西島食品へ!」

輝明と徹は固い握手をかわした。

つぎの瞬間、会議室が大歓声に包まれた。

早速、輝明が新規導入した、高圧蒸気滅菌器を使い薄切り牛肉を滅菌し、新設ラインとの頃合いを見ながら、薄切り肉に焼き目をつけていく、

輝明は、週1日、西島食品でフル作業、

それ以外の日はふみちゃんを閉めた後、

深夜までデーター取り作業を手伝った。

その数、回数にして2000回を超えた。

竈門とゆうこは、数値解析を行った、製造部の応援もあり全員一丸となり数値化に立ち向かった。

驚異的なスピードにて約1か月後、

20000/月生産体制が整った。

西島食品は独自のネット販売も開始した。肉じゃがオムレツの売上は、輝明とゆうこ

のCM効果もあり、月間販売数10000を軽く超えた。

10.

東条フーズの本社は、大阪にある。

道頓堀エリアは、心斎橋駅と難波駅の中間ほどのところにありグリコの看板や、えびす橋など、大阪のシンボルである飲み屋街だ、

その一角に店を構えるミシュラン3つ星、浪速割烹清川(きよかわ)に東条フーズの幹部が集まり、戦略飲み会といえば聞こえはいいが、密談を行っていた。

社長の東条誠(とうじょうまこと)は、この店の魯山人(ろさんじん)の器などを使い、客人をもてなす八寸料理が大好物で頻繁に利用していた。

酒は京都伏見の酒、澤屋まつもと守破離(しゅはり)、刺身や白身魚の焼き物など、

柚子やレモンを添える料理に合う。

金歯をちらつかせ、東条が嫌味たらしくいった。

「それにしても西島食品の、肉じゃがオムレツ驚異的な売り上げやな!」

東条に手を貸す悪徳企業コンサルタント、茂木由起夫(もてぎゆきお)が、食べ終えた白子の茶碗蒸しの容器に蓋を被せながらいった。

「広島の田舎中小企業の分際で、いきっとりますよね?」

東条のチョコに守破離を注ぎながら茂木の部下、田島(たじま)ひろしが続けた。

「ここらで、東条フーズ様の底力を田舎者に分らさんと、いけへんのやないですかね?」

「出る釘は打たれるか!」

そういうと東条は、ニヤリと笑い守破離を一気に煽った。

茂木が戦略飲み会に参加していた、名川にビールを注ぎながらいった。

「名川工場長、確か西島の工場を見に広島に行きはったんやな? どうでしたか?」

名川食品として幅広く業務を行っていたが、買収され現在は東条フーズ関西工場長である。

内心は悔しい気持ちでいっぱいだが、多くの従業員を路頭に迷わせるわけにはいかない

一心で業務を続けていた。

名川は四越の藤木に大変世話になっていた。その藤木の頼みであり、広島まで行ったの

である。

小さな工場であったが従業員は、礼儀正しく機敏に動き、設備は古かったが整理整頓されていた事が、名川の印象に残っていた。

茂木にはフル稼働していて、生産のキー部分は、見せてもらえなかったことを伝えた。

「そうでっか? 見せてもらえまへんでしたか? どないにしましょうか? 東条社長」

東条が、好物のうなぎの八幡巻きに、手をつけながらいった。

「茂木さん、ええ方法ありまっか?

得意の買収とかどうでっしゃろう?」

「流石に一気に買収は、ややこしいですわ! 自分にええ考えがありますねん。

田島! お前の出番や!」と、いいながら、個室の虚空に視線を投げ、茂木は薄ら笑いを浮かべた。

『VOICES OF KOREA/JAPAN LET'S GET TOGETHER NOW』
歌 : Voices of KOREA/JAPAN
作詞 : 松尾潔 作曲:KAWAGUCHI DAISUKE and KIM HYUNK SAK


リリース: 2002年

【ストーリー 8】 著: 脇 昌稔
【ストーリー 9】へ続く..


この小説はフィクションです。
実在の人物や団体などとは、
関係ありません。

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