六章 開発
1.
雪風の肉じゃがは、じゃがいもを、大きくカットするが、オムレツにするため、7mm角に小さくカットした。
タダ爺に教わったようにフライパンを使い、蒸し煮にするのだが、煮込む頃合いがつかめない……
失敗に失敗を重ね5kgあった、あきつ美人はもう3個しか残っていない、「完璧だ!」と思ってもどうしても、余熱で火が入りすぎ形が崩れるのだ。
「こんな時は、何をやっても上手くいかない」経験上分かっていた。
輝明が店の外を、ぼんやり眺めているときだった、
「五百旗頭、久しぶりじゃ!」
大きな声に我に返った。 丹波だった。 暖簾をくぐった丹波が席に座った。
「ワシは3月11日に発生した東日本大震災の支援に、広島県警での募集に手を上げ釜石港内で検視活動にあたっちょった。
3月11日に発生した東日本大震災は、広島でも震度2の揺れがあった。
それから2日後、着の身着のままで、幼い妹を背負い、ポリタンクを持ち、寡黙に行列に並ぶ少年の写真を目にし、不覚にも涙が滲んだ」鬼の目にも涙とは正にこの事だ、
「正直、参った……」
丹波は、話題を変え雑誌をめくりながらいった。
「そういやー お前が保護司をしちょった、生きのええカワイ子ちゃんは、どうなったんなら?」
「あぁ、ゆうこですか? 県大の創生学部を卒業し西島食品で開発に頑張っています」
「大したもんじゃないか! 県大の創生学部ゆうたら、ブチ!(凄く)頭がエエんじゃのぅ?
保護司、流れ星の五百旗頭が立派に更生させた分けじゃ!」
オタフクソースが焼け、香ばしいかおり、上にはこれまでかと、盛られた観音(かんおん)ネギ……
「美味そうじゃのうー」
一口食べ、丹波が唸った!
「こりゃーブチ美味いわ! ほいで(それで)今後どうすんなら? このお好み焼き屋を、ずっと続けるんか?」
「お好み焼き屋は、続けようと思っています。高級ではなく、愛情というエキスを加えた、料理を、お好み焼きメニューに加えられたらと思っています」
「愛情というエキスを加えた料理じゃと?」漠然とした答えに丹波は首を傾げた。
「丹波さんが、一番美味いと思う料理は何ですか?」
「一番美味い料理とのぅ……?」
しばらく丹波が考え込み弾んだ声でいった。
「ピーマンと椎茸炒め、茄子の漬物、それも胡麻をたっぷりまぶしたやつじゃ!」
ピーマンと椎茸炒めは、高校時代お袋がいつも弁当に入れてくれた。
茄子の漬物、胡麻和えは、ばあちゃんがいつも作ってくれ、茶漬けで何杯も飯が食えた。
「丹波さん、それレストランのメニューに、ありますか?
それと、シンプルな料理ですよね?
なぜ美味いと思われますか?」
確かにシンプルだけど、毎日食べても飽きない、丹波は純粋にそう思った。
「丹波さん、人が美味いと思う料理は、思い出の味と愛情というエキスを、加えた料理なのです! 高級な料理ではないけど、俺は、そんなメニューを加えようと思っています!」
少し考えこんみ、丹波が答えた。
「確かにお前がいう通りじゃ! ほっこりする居酒屋的な、お好み焼き屋を目指すということか?」
「ところで丹波さん、肉じゃがは、お好きですか?
お好み焼き風、肉じゃがオムレツを作ろうと試行錯誤しているのですが、どうしてもじゃがいもに、火が入りすぎるのですよ?」
お好み焼き屋が作る肉じゃがオムレツか?「面白い!」と丹波は思った。
「じゃがいもに火が入りすぎる? ワシは、調理のことはわからんが昔、ばあちゃんが、
『野菜は水から茹でるんじゃ!』と、
よう言っちょった。
それなんじゃないんか?」
「水から茹でる……?」
何か気付いたように、輝明が立ち上がった。
「丹波さん! 今からお好み焼き風、肉じゃがオムレツを作りますから、試食して頂けますか!?」
肉の旨味がフライパンに付いた油で具材に油を回すのだが、今回はフライパンが完全に
冷めるまで待った。
雪風の肉じゃがは、じゃがいものカットが、大きい、お好み焼き風、肉じゃがオムレツは、7mm角……
温かい状態から炒めるため、表面に火が入りすぎる。
これが煮崩れる原因じゃないかと思ったのだ、満を期しフライパンが冷めたところに具材を投入し、油をからめ醤油以外の調味料を加え、全体を混ぜ合わせ蓋をして点火した。
「なんとか上手くいってくれ!」
蓋の隙間から蒸気が上がり出した。
恐る恐る蓋を開けた……
「よっしゃー 煮崩れていない!」
今までは、この段階でことごとく煮崩れた。最後に醤油を加える。 フライパンの中は
煮るというより蒸す状態になっている。
味の平均化! 醤油の塩分をあきつ美人がどんどん吸い込んでいく……
輝明が祈りを込め蓋を開けた、7mm角のあきつ美人が煮崩れていない!
すぐさま火を消し、取り出しておいた広島牛を加え蓋をし、待つこと10分……
煮崩れることなく、追い求めた肉じゃがオムレツの種が完成した。
「丹波さんのお陰です!」
丹波は、なぜ輝明が興奮しているのか全く理解できない、
「五百旗頭どうしたんなら?
ワレ大丈夫か!?」
「丹波さん! 今からこれを使い、お好み焼き風、肉じゃがオムレツに仕上げます!」
輝明の興奮は収まらない、ヘラを使い鉄板に溶き卵を引き伸ばし、雪風のオムライスのように堅焼きにした。
肉じゃがの種を加えヘラを使って、器用に包みひっくり返した。
オタフクソースをかけ、青海苔を振りかけ、丹波の前にヘラを滑らせた。
「丹波さん、お好み焼き風、肉じゃがオムレツです。 試食御願いします!」
「ほぅー これが、お好み焼き風、肉じゃがオムレツか?」
一口食べ丹波が叫んだ!
「なんじゃ! こりゃー」
輝明は、心配そうな面持ちで、丹波の目を見つめた……
「玉葱といい、じゃがいもといい、深い味じゃー 香ばしいのに肉が凄く柔らかい、それとの、オタフクソースの酸味がブチ合う!
冷えきったビールを飲みながら、こいつをつまんだら最高に美味いと思うで!」
堰を切ったように、満面の笑みを浮かべ、輝明がいった。
「美味いものを食べてもらいたい、
愛情というエキスが加わっていますから!」
丹波がポツリといった。
「東日本大震災の被災者たちも、簡単にこがな美味いものが食べられたらのう……」
輝明は早速、ゆうこにメールを送った。
『西島ゆうこ 殿』
ご無沙汰しています。 元気に食品開発に、励んでいますか? タダ爺の数々の話に感銘を受け、ふみちゃんでは、お好み焼きを基本とした、愛情のエキスを詰め込んだ、思い出の味を目指し、第二のお好み焼きメニューを開発しました。
それは、お好み焼き風、肉じゃがオムレツです。 ゆうこも、知っていると思いますが、広島県警の丹波警部補に試食してもらいました。
丹波警部補ですが、県警を代表され東日本大震災の援助に入られ、釜石港内で検視活動にあたっておられました。
又、ゆうこが、県大の創生学部を卒業し、立派に西島食品で食品開発にあたっていること、喜んでおられました。
これを完成させるまでに色々なハードルがありました。
一言でいったら試行錯誤の繰り返しでした。
何度やっても小さくカットしたあきつ美人が煮崩れ、挫折しそうになりました……
それを解決できたのは、丹波さんのアドバイスでした。
調理内容を時系列にまとめたファイルを、添付しておきます。
丹波さんが最後に、
「東日本大震災の被災者たちも、簡単にこがな美味いものが食べられたらのう……」
と、いっておられました。
俺も心底そう思います。 これは夢ですが、もし西島食品の新たな商品として全国に普及すれば幸甚に存じます。 輝明
何度も読み返し輝明はメールの送信ボタンをクリックした。 数日音沙汰は無かった。
ゆうこから、返信メールが入ったのは、
3週間後だった。
『五百旗頭輝明 様』
お好み焼き風、肉じゃがオムレツのメール、ありがとうございました。 竈門部長初め、食品開発部内で拝見させて頂きました。
結論から書かせて頂きます。
「素晴らしい企画です! お好み焼き風、肉じゃがオムレツを食品開発部の商品開発目標にしたいと一同おもっています。
開発コードネームN001と勝手ながら、命名しました。 西島食品は中小企業です。
潤沢な資金源はありません。
最大のハードルは、部長以上に稟議を通し、開発の承認を得ることです。
幾度も部内会議を行いました……
返信が遅くなったのも、部を上げて構想を熟考していたからです。
しかし例え稟議が通ったとしても、間違いなくいえるのは、弱小企業である西島食品は、成功するかしないか、会社の存亡をかけた、プロジェクトになる事は間違いありません。
失敗は許されないのです。
そこまでの覚悟を、竈門はじめ部全員、
腹を括りました。
又、N001を量産市販化するためには、日本の食品加工企業に於いて、新規開発技術の確立をする必要があるのですが、残念ながら目途はたっていません……
とにかく目前のハードルである稟議を通すことに全力を注ぎます!
6月21日(金)午前10時から稟議を、通すため、部長以上へのプレゼンを行います。
結果は終わり次第電話連絡させて頂きます。 西島食品開発部開発課 西島ゆうこ
2.
忠則を筆頭に、徹はじめ居並ぶ部長たちの、視線を一身に受け、ゆうこはプロジェクト室正面に準備された電子黒板の前に立った。
「本日は、『仮称』お好み焼き風、肉じゃがオムレツ量産化計画に関し、会長・社長はじめ各部長のご承認を頂戴いしたく、説明させて頂きます」
ゆうこの合図で照明が消され、電子黒板にまとめられた構想案の一覧表が表示された。
「これが販売コストを考慮し量産加工する為に作成した、お好み焼き風、肉じゃがオムレツの構想一覧です」
製造部長の、加藤広和(かとうひろかず)が挙手した。
「量産化対応は、どのようにお考えですか?」
ゆうこが即答した。
「量産化対応は、ブロック調理方式によるレトルト化です!」
「ブロック調理方式?」
レトルトに関しては熟知していたが、ブロックといった言葉は、加藤含め全員初めて、聞く言葉だった。
電子黒板が、船を製造する画面を表示し、ゆうこが、ブロック調理方式について説明を始めた。
「ちょっと待ってください。 西島L、我社は食品加工会社ですよ?」
名前の後にLを付けるのは、女性社員であることを示す。
「加藤部長、最後まで説明を聞いていただければお分かりになります」
そういって、ゆうこは説明を続けた。
電子黒板は信号機のように下部赤、中部黄、上部青、と船を横にスライスした画像に切り替わった。
「従来、船は下の部分からの積み上げ方式で作られていました。
しかしそれでは、下部が完成しないと上部は造れません、76年前わずか3年の工期で、作られた巨大艦があります」
「76年前……」
プロジェクト室に声がこだました。
ゆうこが明瞭な声でいった。
「その船の名は戦艦大和です!」
瞑目して聞いていた忠則が目を見開いたと同時に、薄明りのプロジェクト室がざわめいた。
ゆうこが工期を死守する為、世界で初めて造船に採用したブロック工法について説明を始めた。
電子黒板は先ほどと変わり船首部、中間部、後方部、縦にスライスした、画面に切り替わった。
「ブロック工法を取り入れたのは、我が社と同じ名前、西島技術大佐です。
戦艦大和は、船首部分、中間部、後方部、細かくブロックに分け、単独に造り、最後に巨大クレーンを使って艦を組み上げていきました。
これなら、下部ができなければ上部は造れない、この問題の解消ができます」
ビジュアル的に色分けされた船体は、プロジェクト室にひそかな興奮をもたらした。
食品製造とどういった関係があるのか不明だが、そこに示されているものは紛れもなく、ブロック工法の優位性だ。
話の種まきは終わった。
ゆうこは、ブロック調理方式について話し始めた。
「ここまでは、造船におけるブロック工法について話しましたが、これからブロック調理方式について説明させて頂きます」
電子黒板の表示が変わった。
プロジェクト室、全員の目が画面に集まった。
「N001は大きく分け、2つの調理加工に分類されます。 野菜・多孔質加工野菜(こんにゃく)牛肉、この2分類です。
つまり素材により調理方法が異なります。ここまでは、よろしいでしょうか?」
総務部長の、沖( おき )田( た )順( じゅん )三( ぞう )が質問した。
沖田は、先代忠則の頃からずっと西島食品に使えている古参部長である。
「わしゃー 専門的な言葉、よう分からんのじゃが、(よくわからないのですが)ゆうこちゃん多孔質加工野菜って、どういう意味なん?」
その言葉でプロジェクト室が和んだ、
ゆうこが笑顔で答えた。
「専門用語を使い、すいませんでした。
こんにゃくは、芋を加工して出来ていて、単純な野菜とは異なります。
軽石の断面は穴がいっぱいありますよね? これは造られる過程でできたもので、多孔質とは、穴がいっぱいある構造をしたものです」
「そうか、ワシの脳みそと一緒で穴だらけじゃということか!」
沖田が頭をカキながらいった。
「この前なんか、眼鏡がのうなって(無くなって)探し回ったのじゃが、1週間後、冷蔵庫から、キンキンに冷えた眼鏡が、出てきたんじゃ……」
「沖田部長、冷蔵庫から眼鏡ですか?」
真顔でゆうこがいった。
「老眼でのう、遠くは眼鏡をかけんと見えん、ほいじゃが(だけど)近くは、眼鏡をかけたら焦点が合わん、冷蔵庫に入っちょる物を探すときは邪魔なんじゃ。 ほいで(だから)の眼鏡をはずし、冷蔵庫の中に置いたことを、
すっかり忘れちょったわけなんよ、年中探し物をしちょる、情けないわ……」
プロジェクト室が爆笑の渦に包まれた。
「どこまで話しましたっけ?」
すっかり緊張のとれた、ゆうこが話をつづけた。
「加工する素材に合わせ加工 A、B、それぞれ異なる製造ラインで加工します。
加工時間が異なっても、作り置きもでき、生産調整も可能になります」
ゆうこは、パッケージに詰め完成させるまでの流れを説明した……
「この方法でしたら段替えに拘束される時間が大幅に削減され、食品加工として歩留まり率は、97%が見込める計算となります」
「そうか! 加工A・B前工程に影響されず生産できる分けですね」
製造部長の加藤が唸った。
加工に対しゆうこは、数値的な説明をした。
「現段階では目標値となりますが、1パッケージの加工時間は84秒、歩留まりが97%なので、昼夜生産して9130/月パッケージ、生産できる能力があると試算しています」
西島食品としては、レトルト加工において、最大で3760/月食が最大だった。
それの2・4倍という言葉に会議室がざわめいた。
「2011年3月11日に発生した、東日本大震災もまだ復興の真っ最中で、我が西島食品に於いても、社会に貢献していく責務があると思います。
N001を是非とも完成させ、手軽に本格的な食品を被災者に届けたい!
その一心で本プロジェクトを構想しました。会長 及び、社長にとり肉じゃがは、思い
出の味だと認識しております」
つづいてレトルト市場での競争力につき、簡単に触れ、いよいよ、ゆうこは、この日の核心について切り出した。
「このプロジェクトを成功させるためには、2つのハードルがあります」
電子黒板に二つの題目が表示された。
「残念ながら西島食品の生産ラインは、旧態依然の生産方式であり、ブロック調理方式に、
現行生産設備を再構築する必要があります。
又、西島食品がN001にて世間を、
『あっ!』といわせるためには輸入肉の高圧蒸気滅菌技術の確立です」
「ひとついいですか?」
重々しい声がした、社長の徹だった。
「高圧蒸気滅菌技術に関し、日本の食品加工会社で品質も含め、目標とする大量生産を、実現した企業はないと記憶していますが違いますか?」
「仰る通りです」想定していた質問だった。
「肉はタンパク質の繊維が絡み合い形成されています。
加熱するとタンパク質が収縮し、硬くなってしまいます。 ただ中心部を75度で1分間以上、加熱しないと滅菌できません。
又、N001では薄切り肉を使うためブロック肉に比べ菌が繁殖する表面積が多く、加熱滅菌は必須です」
徹は、ゆうこがいいたいことを、
ズバリいった。
「加工する調理対象をワークとよびましょう。ワークは厚さが薄い、しかし滅菌するには、加熱するしかない、ただ加熱すると硬くなる。
雪風の肉じゃがのように、時間をかけ熱を入れられたら滅菌はできる、量産食品加工では、調理時間はかけられない、そこでいきついたのが、高圧蒸気滅菌なのですね?」
プロジェクト室の、あちらこちらがざわついている。
企画部長の、森嶋光宏(もりしまみつひろ)が質問した。
「それで高圧蒸気滅菌技術を、確立するのにどれくらい時間がかかりますか?」
「1年です……」全く根拠はなかった。
ゆうこは思いついた日数をいった。
その返答に対し薄闇の中でじっと、ゆうこを見つめていた、徹の目が閉じられたのが分かった。
何かを決断したように、徹が目を開き、
ゆうこにいった。
「それで生産設備の再構築、高圧蒸気滅菌技術の確立、いくら資金が必要になりますか?」
慌てて竈門(カマエツ)がフォローした。
「あくまでも見積段階ですが、1億2千万円必要かと……」
「1億2千万!? 西島食品の売り上げは、20億弱、純利益は6千万ですよ!」
経理部長の、畑山巧(はたやまたくみ)が目を丸くしていった。
プロジェクト室に集まった各部長は、
言葉を失っている……
明かりが戻ったプロジェクト室、
竈門と、ゆうこは、稟議決裁勝負のときを迎えようとしていた。
「N001の開発、
ご承認いただけませんでしょうか!」
竈門とゆうこが深深く頭を下げた……
「もし、N001の開発を行わなかったらどうなりますか?」
徹は、口調は優しいが鋭い目を、竈門と ゆうこに向け単刀直入に質問した。
毅然とし、ゆうこが返した。
「N001は、思い出の味・愛情のエキスを注入完成させ被災者に寄り添う食品、いや! 自信を失いつつある、この日本のカンフル剤になると確信しています!」
重苦しい空気が、プロジェクト室に充満している。 少しおいて徹の声が響いた。
「畑山君、資金は積立金と、銀行からの借り入れで何とかなりませんか?」
しばらく誰も口を開かなかった。
中小企業としては、当然のことながらハイリスクだ、最終的にN001の稟議に対し、
決断をするのは徹である。
「忠則会長はいわれました。
なぜ人は生きるのか?
それは、自分以外の物を生かすためだと!」静まりかえったプロジェクト室に、ゆうこ
の声が響き渡った。
全員が固唾をのみ、視線が徹に集中した。
「分かりました!」
スッキリした微笑みを浮かべ徹がいった。
「N001プロジェクトを進めましょう。
忠則会長、皆さん、よろしいですね!」
代表取締役の徹がいいと、いっているのに、反対意見などでるはずもなかった。
「ありがとうございます!」
竈門とゆうこは、机に頭をこすりつけた。
3.
「まだ、稟議を通すためのプレゼン終わらないのだろうか?」
腕時計を何度も覗きながら、輝明は、落ち着きなくひとり言をいった。
「ワレちいと(少し)落ち着いたらどうなんなら? 五百旗頭!」丹波にいわれ、
「これが落ち着いていられますか!」
輝明は強い口調でイラついている。
「ほうか……? 果報は寝て待てと、昔からいうじゃろうが」丹波は新聞を見開き、肉玉そばをつまんでいる。
「そがに、神経質になったらもたんで?」
情報によるとN001プロジェクト稟議会議が、始まるのは午前10時から、
「ゆうこは、説明に困っているのかなぁ……」
「五百旗頭、そがに心配するな! 昼飯までには終わると思うで、それはそうと広島競輪登録番号、N1008 本村63歳、競走番号11、411戦372敗 最近の勝率は、
00%か……
こいつ、今日が引退レースじゃが、1勝できりゃぁエエんじゃがのぅ……
わしゃー 弱いもんを見たら無性に応援しとうなるんよ!」
輝明はテーブルに置いた携帯の周りを落ち着きなくうろついている。
「ワシは人生の潮目は、行動せんと変わらんと思う、いまその夢を追いかけちょる真っ最中じゃないか、信じて待とうや……
のう、五百旗頭!」
「そうですね!」輝明が話そうとしたとき、テーブルに置いてあった携帯が小刻みに震え、
着信音が響き渡った。
「丹波さん来ましたーー!」
輝明が興奮気味に携帯にでた。
ちょうど本村の引退レースが始まった。
「おぅ!」と、片手を軽くあげイヤホンをし丹波はレースの中継を聞き入った。
「お待たせしました、ゆうこです。
いま稟議説明のプレゼンが終わりました」
ゆうこの声が、心なしか弾んでいるように感じた。
「N001プロジェクト、徹社長の稟議決裁が下りました!
カマエツ部長と、変わります!」
「竈門です! これからが勝負です。
輝明さん、今後ともご支援のほどよろしくお願いします」
「もちろんです!」輝明は、丹波にガッツポーズをしてみせる。
丹波の歓声が上がったのは同時だった。
「五百旗頭! 本村こいつ最後の引退レースで勝ちゃぁあがったで!」
丹波は親指を立て、グッドポーズを返した。
「竈門部長、提案が一つあります。
N001プロジェクトコード、N1008に変えませんか!
広島競輪引退レースで、本村選手勝ちました!」竈門は、輝明が何をいっているのか、全く理解できない、
「竈門部長、ゆうこに変わってもらえないでしょうか!」
ゆうこの明るい声が聞こえた。
今のいま、引退レースで勝った選手の登録番号が、N1008であることを説明した。
「ゆうこ、プロジェクトコード縁起を担いでN1008にしよう!
このプロジェクト必ず成功させような!」
4.
プロジェクトがスタートし早いもので4カ月すぎた。 プロジェクト室にて四半期における進捗状況が説明されていた。
「勝手ながらプロジェクトN001は、N1008というプロジェクトコードに、変更させて頂きました」
電子黒板に、加工A(加熱調理)
加工B(高圧蒸気滅菌調理)
ロードマップが表示され、ゆうこが説明を始めた。
「ここに表示している表は、手元にお配りしたN1008のロードマップです。
加工Aに関しては、西島食品が得意とする生産加工ノウハウを取り入れ、予定より早く設備改修が完了しました」
手元の用紙を遠くに眺め、加藤が確認するように質問した。
「最大のハードル、加工Bの確立が進んでいないように見受けられますが、進捗の具合はいかがでしょうか?」
全くその通りだった。
真っ先に解決しないといけない高圧蒸気滅菌技術の確立が、全く進んでいないのだ、
「7カ月のスパンを設けているのですが、おっしゃるとおり進んでいません……」
竈門がフォローした。
「予定通り今年いっぱいには、完了させようと開発部一丸になってがんばっています」
「お願いしますよ竈門部長!
銀行から苦労して、5千万借り入れたのですから!
それよりも、我社の預金取り崩したので、もし利益がでなかったら、間違いなく赤字になります」
さらりと経理の畑山が、プレッシャーをかけた。
「いいかなぁ……」社長の徹だった。
「畑山部長、もし赤字転落したらどうなりますか?」
畑山が真剣な顔をしていった。
「指示通り預金は取り崩し、蓄えは万全ではありません、赤字というより不渡りを2回だすと会社は倒産します。
一度でも出すと、ほとんどの取引先が手を引きます。 信用を失った企業の先行きは、厳しいです……」
竈門は、体から血の気が引くのがハッキリ分かった。
しばらく間をおき徹がいった。
「全責任は私にあります!
竈門君、国内の食品加工会社でどこも成功したことのない高圧蒸気滅菌技術、そう簡単にいくわけないじゃないですか!
それくらい君も分かっているはずです。
だからやる価値があるのですよ。
見事に成功すること、私は信じています!」
徹は力強く竈門の肩を叩いた。
5.
開発部員は、数えられないくらいの徹夜を続けている。 プロジェクトリーダーを任されたゆうこを先頭に、何度挑戦しても目標の結果が得られないのだ……
目標の滅菌数になるまで蒸気をかけすぎると、どうしても熱が入りすぎてしまうのだ、
要するに既定の蒸気を一定時間かけなければ滅菌できず、一定時間を超えると熱が入りすぎ、タンパク質がチジミ硬くなってしまう。
完全に追い込まれたゆうこは、疲労困憊している。
部員に申し訳なく、涙が込み上げた。
「みなさん、今日はうちに帰って、
ゆっくり休んでください。
私、もう少し頑張ってみます……」
解決案など1mmも浮かんでこない、
さすがのカマエツも、学問理論だけでは、どうしようもなかったし、文系の加奈子には手も足もでなかった。
部員全員、肩を落とし静しずまり返っている……
そんなときである、管理棟2階にあるプロジェクト室のドアーが開き明るい声が響いた。「ゆうこちゃん! 頑張っている? これ差し入れ!」
「徹社長に入出許可を頂きました」
IDカードを首からつるした、白バイ隊員の栗山浩美巡査長と、パンパンに張ったレジ袋を両手に抱えた輝明だった。
「ゆうこ、竈門部長、みなさん、
肉玉そばを持ってきました。
冷めないうちに食べましょう!
場を和ますように、満面の笑顔で輝明がいった。
「俺たちは、こんなことくらいしかできませんから…… 目の下にクマを作って何落ち込んでいる!
美人が台無しじゃないか?
恐怖のB型、ゆうこらしくないぞ!」
「みなさん、輝明さんが一生懸命焼いた肉玉そば食べましょう!」
浩美が割りばしと一緒に、使い捨て容器に入った肉玉そばを配った。
「ありがとう浩美ちゃん、今まで食べたお好み焼きの中で一番おいしい!」
涙を流しながら笑顔で、ゆうこがいった。
「なんかエエ臭いがしょうる思うたら、N1008プロジェクト室が、お好み焼き屋さんになっちょる!」
ひょこひょこと沖田が入ってきた。
「そりゃそうと、駐車場に止めちょる、赤いNAロードスター誰の車?」
「NAロードスターって、20年以上も前に造られた車、よくご存じですね!」
そういう浩美の返答に沖田は、懐かしむように、過去のことを語り始めた。
「バブル時代、もう20年以上経ったか……
2人しか乗れんで収納もないオープンカー、会社の中ではオタク集団といわれ、まともな予算も部屋も与えられんかった。
開発をする場所もなく、タイムカードを押し、工場の隅にある車庫に集まった。
面白そうな話を聞きつけ各部署から約50人集まったそうじゃ。
お金も人もかけられんかった、みんな仕事が終わった後の夜や、休日など時間外に開発を手伝ったそうじゃ……
その中に弟がおった。
西島食品でいったら、竈門やゆうこちゃん、そして、開発部のみんなと同じじゃのぅ……」
ことある毎に、開発主査は、オープンカーの魅力を語って回った。
この前のN1008進捗発表のとき、竈門部長に対する、徹社長の振舞には感動した!
金もない、人もいない、まともな場所もない、数々の困難がみんなを襲った。
弟は平板から、ロードスター独特な、流線形を成形する金型をプレス機に取り付け、数えられんほど試行錯誤したそうじゃ。
そうして、世に出たロードスターじゃが、今では4代目、大ヒットする車になった。
竈門部長ゆうこちゃん、そしてみんな……
『へこたれずにガンバレ!』としか、ワシにはいえん、ほんま情けないわ……」
「沖田部長、そのお気持ちだけで十分です!」
竈門は感激のあまり、沖田の手を強く握締めた。
6.
使う薄切り牛肉は、重さが同じでもロット生産では、投入する肉の表面積・厚さの違い、設定値が定められない、試行錯誤しながら既に3カ月繰り返しているのだ……
「どうして加熱するのに、蒸気が必要なのですか?」単純に輝明は、竈門に質問をした。
「皆さんが分かるよう、生活体験を例に説明します。
60度の熱湯風呂に入ると、低温火傷しますが、80~100度のサウナでは、火傷しませんよね? 輝明さん何故だと思います?」
「確かに高温だけど、湯を張った風呂とは、全然違いますね!?」
浩美も不思議そうな顔をしている……
「答えは、サウナでは体の周りが空気だからですよ!」
「空気!?」輝明と浩美の声が重なった。
「空気のほとんどは窒素で、水に比べて熱を伝えにくく、熱伝導率の低い物質だからです。
体の周囲にある、空気の層は体に熱を伝え、冷えますがあまり対流しません。
体のまわりは、冷えた空気のバリアで覆われることになり、高熱が伝わる速度は遅く、かぎられた時間だったら火傷しません。
逆に水は熱伝導率が高く、熱いお湯に触れると、皮膚もすぐ高温になり火傷します」
「なるほどガッテン! ですよ、竈門部長!」晴れやかな表情で輝明がいった。
「では蒸気はどうか、水を100度まで上昇させても蒸気にするには、更に気化するための熱を与えないと蒸気にはなりません。
沸騰した薬缶から蒸気をだすには気化熱、つまり加熱し続ける必要があるわけです。
加熱を止めると、蒸気も止まります」
「確かにそうですね!」
浩美がうなずいた。
「同じ100度でも、水と蒸気では熱エネルギーが蒸気の方が6倍大きいです。
蒸気は対象物に熱を与えると、冷えて水に変わり体積が非常に小さくなります。
その個所では圧力が下がり、再び蒸気で覆われ、滅菌対象物に熱エネルギーを与え続けます。
比較値でいうと、蒸気は空気よりも約1000倍、水よりも約100倍、伝熱能力が高いです」
「いわれていることは、理解できるのですが、分かりやすい何か具体的な例は、ありませんか?」輝明のいった通り浩美も同感だった。
「具体例ですか……」
少し考え竈門が思いついた。
「中華饅! そうです! 蒸し全般料理です。専門的な話になりますが、鍋に入れた常温
の水は、H2Oの分子どうし指先を絡めて、
フラフラと繋がりあっている状態を想像して
みてください。
そこに熱エネルギー振動を加えていくと、中には耐えきれなくなり、繋いでいた手を放し、空中に飛んでいく者がでてきます。
それが僕たちに、見える水蒸気です」
輝明がすぐさま質問をした。
「水蒸気って湯気のことですよね?」
「そうです、水蒸気はH2Oのグループ状態で、まだ我々の肉眼でも確認できます。
先程から蒸気という言葉がでてきますが、蒸気とは、水蒸気と違い更に加熱され、完全に水分子H2O単体の状態で、我々の肉眼では見えません……
一言でいったら熱エネルギーで激しく振動し、空気中を飛び回っている水分子ということです」
「我々がいう蒸し料理とは、水蒸気料理で、高圧加熱滅菌は、蒸気を利用しているってことですよね?」
輝明が納得したようにいった。
「その通りです! 微生物の体はタンパク質から更生されています。
直接加熱するより、蒸気(湿熱)の方が、タンパク質を熱変性させやすく効率よく死滅できます」
「Did you understand that easily? 問題なく、分かりましたか?」ゆうこが、指鉄砲で輝明を撃ちぬくようにいった。
(安心した、恐怖のB型が戻ってきたか!?)輝明は心の中でそう思いサムアップした。
「もし良ければ、俺に薄切り牛肉の高圧加熱滅菌、やらせてみてもらえませんか?」
「望むところですよ、輝明さん! ゆうこちゃん食品工場用白衣用意して!」
「私たちが寄ってたかって、3カ月も試行錯誤してること、そう簡単にいく分けないじゃん!」
そういいながら、ゆうこは輝明に食品工場用白衣を渡し、熱滅菌手順の説明を始めた。
「薄切り肉をステンレス鉄板に乗せ、片面に焼き目をつけます。
肉の雑菌は、肉の中ではなく表面に繁殖します。
薄切り肉の場合、固まり肉と比べ表面積が多く雑菌のリスクが高くなります」
次にゆうこは、円筒形の釜の蓋を開けステンレスプレートごと、高圧加熱滅菌機の中に投入し蓋を閉じた。
主な細菌は5種類あり、死滅する温度85度以上、加熱時間は、1分以上必要である。
片面に焼き目をつけた、1mm厚の薄切り牛肉では、滅菌実験を重ね60度で、5分間蒸気滅菌すれば、細菌を死滅させることが分かった。
「ピッピー」滅菌処理終了!
処理したプレートをステンレス製の、長机の上に置き、ゆうこが確認する……
少し硬いが滅菌はされている。
加熱温度と処理時間設定が、加工ロットにより、60度で5分一定では仕上がりが、
バラついてうまくいかない……
この壁で3カ月、目標予定より遅れているのだ、竈門がアゴに、V字に開いた指を押し当ていった。
「加熱しすぎてタンパク質がチジみ、やはり肉が硬くなっているね……」
腕を組み一連の作業内容を、見ていた輝明が質問した。
「2つ質問があります! なぜ片面焼いた後、高圧加熱滅菌機に入れるのですか?」
「なぜ片面焼いた後……」
いわれてみれば、竈門も ゆうこも理由が見つからない、
「主な細菌を死滅させるためには85度以上、加熱時間1分以上でしたよね?
なぜ60度で5分設定なのですか?
115度で2分じゃダメなのですか?」
それには、ゆうこが即答した。
「医療機器高圧加熱滅菌では、ガイドラインが設けられており、食品加工的に解釈し、
60度で5分設定にしました。
115度で2分じゃ、100%滅菌できないから……」
「食品加工にガイドラインは、設けられていないのだよね?
目的は最終的に滅菌できれば良いわけだ、
俺からの提案!」
二人は、次に出てくる輝明の言葉を、待ち構えた。
「ロットでバラツキがあり、どうしょうもない分けだ!
先に115度で2分滅菌しましょう。
ゆうこ少なくとも、80%以上は滅菌できるんだよね?
次にメイラード反応……
焼きを加え香ばしさを加えましょう。
ここで100%滅菌でき、後はタダ爺の肉じゃがのように、余熱で柔らかく火が入れば良いわけだ!
なぜ、高圧加熱で100%滅菌しようと、拘るのかなぁ?」
何故といわれても答えは簡単、滅菌する為に、すでに1300万円投資しているからである。
「俺は今まで何千枚もお好みを焼いてきた。どれくらい焼けば、丁度いい焼き目がつき、
最終的に余熱で火が入るか感覚的に分かる。竈門部長、試させてもらえませんか?」
輝明はステンレスプレート一面に油を塗り、薄切り肉を広げ高圧加熱滅菌機に投入して、
115度で2分で滅菌加熱した。
この段階でゆうこは、肉に含まれる細菌量を測るため、一切れサンプルを確保した。
まだ肉のタンパク質の収縮は、見受けられない……
ここから先は輝明の職人焼きだ、肉が焼ける香ばしい香りが漂い出した。
時間にして1分10秒くらいだろうか?
「もう良いでしょう!!」別容器に移した。ゆうこは、細菌量を測るため再度サンプルを確保した。
加熱した合計時間は、3分10秒くらいだろうか?
「ゆうこ、肉本体の余熱で火が入り、常温になれば完成だ!」
輝明は自信たっぷりに、いいながらスキン手袋を外した。
肉に含まれる水分量は約60%、ほのかに湯気が上がっている。
常温になるのが待ち遠しい、52度、50度、47度、31度、赤く光る調理温度計のデジタル値が小さくなっていく……
「28度! 常温に達しました!」
ゆうこの声が響いた。
「世間では冷めるときに、味が入っていくという話がありますが、僕が今まで実験して、
そんな現象は観測されていません、味が入るのは浸透圧による平均化です。
1気圧つまりこの状態で平均化し、味が入るのが約30分、味が入ったら、みんなで試食しましょう!
ゆうこちゃんは、どれくらい細菌量が変化しているのか、測定してもらえないかな?」
分析を終えたゆうこが、慌てるように加工場の扉を開けた。
ゆうこが開けるタイミングと、輝明が中から扉を開けるタイミングが一致し、体を受け止めた輝明の腕の中に、ゆうこが飛び込む形になった。
抱きしめている状態がしばらく続いた…… 無言がしばらく続いたが、我に返った、
ゆうこがいった。
「……サンプル1では、細菌量7、サンプル2では……」
ゆうこが測定用紙を見つめている。
「サンプル2では細菌量0、滅菌成功です!」
冷静に竈門がいった。
「分かりました。 味の平均化が終われば、それ以上味は入りません、早速試食してみましょう」
待ちきれない、ゆうこが早速試食した。
「香ばしいのにすごく柔らかい、味付けもバツグンです! 私これ以上の味付け肉、食べた事はありません!」
竈門が噛みしめるようにいった。
「最大の難関、味付け肉ブロック調理加工は、これを数値に確立すれば完成です! ゆうこちゃん、できたようなものですね!」
先程の、ゆうことのアクシデントを、打ち消すように、優しく、ゆっくりした口調で、輝明がいった。
「ゆうこ、何一人で頑張ってんだよ?
こんな事で3か月も空回りしてた分けだ、もっと俺に頼ってくれよ!
resilience(レジリエンス)困難な状況にもかかわらず、しなやかに適応できる強さだよ!」
輝明に対する、ゆうこの姿勢が、明らかに変わり始めたのはこの時からだった……
『夢をあきらめないで』
歌 : 岡村孝子
作詞・作曲:岡村孝子リリース: 2011年
【ストーリー 6】 著: 脇 昌稔
【ストーリー 7】へ続く..
この小説はフィクションです。
実在の人物や団体などとは、
関係ありません。